【取材】AICJインターナショナルスクール|英語だけではない。「自分で選択できる力」を育てる
AICJインターナショナルスクールは、広島・京都・大阪に初等部を置く学校群です。初等部3校は国際バカロレア(IB)のPYP(Primary Years Programme)認定校で、英語を基本言語とする探究型の学びと、国語・算数を組み合わせています。大阪校では、2028年度に中等部(MYP)の開校を予定しています。高校段階では、広島にあるAICJ高等学校のDPコースへの進学という道が用意されています。
英語で学ぶ環境には魅力を感じる。
一方で、「日本の教育との違いは何か」「親が英語を話せなくても大丈夫か」「途中で別の進路を選びたくなったらどうなるのか」と迷う家庭も少なくないでしょう。
AICJインターナショナルスクールは、広島・京都・大阪に初等部を置く学校群です。
初等部3校は国際バカロレア(IB)のPYP(Primary Years Programme)認定校で、英語を基本言語とする探究型の学びと、国語・算数を組み合わせています。
大阪校では、2028年度に中等部(MYP)の開校を予定しています。高校段階では、広島にあるAICJ高等学校のDPコースへの進学という道が用意されています。
今回お話をうかがったのは、AICJインターナショナルスクール京都校でアドミッションを担当し、広島・京都・大阪の広報・入学募集を統括する坂田氏です。
学校の成り立ちから、保護者が抱きやすい英語・日本語・進路への不安、日々の学校生活、率直に伝えている編入時の難しさまで、詳しく聞きました。
AICJには、どのような学びの道がありますか?

AICJインターナショナルスクールは、国際社会で活躍・貢献できる人材、各分野でグローバルリーダーシップを取れる人材を育てたい、という考えのもとにある学校です。幼い時期から英語力、探究心、主体性を育み、日英両言語を使い分けながら学んでいくことを大切にしています。
初等部は広島・京都・大阪にあります。広島にはAICJバイリンガル幼稚舎があり、その先にAICJインターナショナルスクール初等部、AICJ中学校・高等学校があります。初等部卒業後には選考を伴いますが、幼稚舎から高校までAICJの環境で学べる道があります。
取材時点で広島校は開校7年目、京都校は5年目を迎えており、大阪校は京都校の翌年に開校しました。広島は、鷗州塾が長年地域で教育事業を行ってきた背景もあり、英語教育を一貫して考えたい家庭に選ばれてきたと感じます。
京都校・大阪校は、海外から一時的に来日する家庭を主な対象とする学校ではなく、基本的には国内の家庭が通う学校です。京都校には京都・滋賀、枚方など京都寄りの大阪から通う子どもが多く、大阪校には大阪・兵庫から通う子どもが多いですね。高槻・茨木周辺では両校を比べる家庭もありますが、実際には交通の便で選ばれることが多いです。
京都校を開校した背景には、京都が日本文化の中心の一つであることに加え、AICJインターナショナルスクールが2003年からニュージーランドでオークランド・インターナショナルスクールを運営してきた経緯があります。そこで育った子どもたちが京都を訪れる際に滞在できる場所を設けていたこともあり、京都という土地に以前からなじみがありました。
また、初等部3校は国際バカロレア(IB)PYP認定校です。PYPでは、教科を横断しながら、子どもたちが自ら問いを立て、考えを言語化する学びを大切にしています。国際的な枠組みを用いながらも、子どもの年齢や地域に応じて学びを設計していくことが、AICJインターナショナルスクールの教育の土台です。
インターナショナルスクールでありながら、「日本人が安心して通える」とは?
AICJインターナショナルスクールらしさとして大きいのは、「母国語が日本語の方でも安心して通えるインターナショナルスクール」でありたい、ということです。
在籍する子どもの約9割が日本人で、外国籍の子どもは各クラスに一人いるかどうか、という構成です。
学校では、国語(Japanese)の授業を除き、基本的に英語で生活し、授業も英語で進めます。教員も外国人教員が約8割です。ただ、友だち同士が何語で話すかは子どもたちに任せています。英語を使っても、日本語を使ってもよい。母語を大切にすることも、私たちにとって大事なことです。
低学年のうちは友だち同士で日本語を使う場面もありますが、三、四年生くらいになると英語のほうが自然になる子も多いです。先生とのやり取りは英語なので、子どもたち自身が「先生を外さず、みんなで話せるように」と考え、英語を使う場面が増えていきます。
保護者の英語力を入学条件にはしていません。取材時点の大阪・京都・広島3校の統計では、保護者の6〜7割は英語を話さないと伺っています。家庭でも母国語を大切にすることを推奨しており、学校で英語に触れ、家庭ではそれぞれの家庭の言語環境を大切にする考え方です。

英語、国語、算数を、なぜ同時に大切にするのでしょうか?
英語やIBだけを学ぶのではなく、国語と算数も毎日きちんと学ぶことを大切にしています。子どもが将来、AICJインターナショナルスクールの中等部に進みたいと思うかもしれませんし、日本の中学校を選びたいと思うかもしれない。その時に、最初から進路の選択肢を狭めないことが重要です。
特に幼い子どもが入学する時点では、学校を選ぶのは保護者の判断が中心です。だからこそ、6年間のなかで子ども自身が「次にどんな学びをしたいのか」「自分はどうなりたいのか」を考えられるようにしたい。私たちにとって学校は、子どもが自分で選択できるようになるための場所です。
国語では、学習指導要領にのっとった教科書も使います。一方で探究とのつながりのなかで学ぶため、一般的な学校と同じ順番で進むとは限りません。
例えば、1年生が3年生で学ぶ漢字に触れる一方、その時点ではまだ1年生の漢字の一部を学んでいないこともあります。ただ、6年間を通じて、日本の小学校と同等の必要な漢字を学ぶ設計になっています。
また、子どもたちから「今の自分の力を知りたい」という声があったことをきっかけに、漢字検定にも取り組んでいます。学校が一方的に決めたのではなく、子どもたちの発言から始まったことです。
保護者の方からは、「近所の子どもが知っている漢字を、うちの子はまだ知らない」「掛け算はできるのに九九を言えない」と不安の声が出ることもあります。学校としては、学んでいないのではなく、学ぶ順番や方法が異なることを丁寧にお伝えしています。
算数ではSingapore Mathを取り入れています。日本では2年生で九九を学びますが、Singapore Mathでは、例えば「三一が三、三二が六」と唱える形を必ずしも先に学びません。その代わり、1年生から生活のなかの場面を通じて、掛け算や割り算の考え方に触れます。九九を唱えられないことと、掛け算を理解していないことは同じではありません。
保護者は、IBや探究の学びをどのように理解していくのですか?

保護者の方のなかには、IBを知らない方、インターナショナルスクールで学んだ経験がない方も多くいます。そのため、子どもたちが何を学んでいるのか、インターナショナルスクールではどのようなことを大事にするのかを、行事ごとにお伝えしています。
例えば、算数や漢字の学ぶ順番が日本の一般的な学校と異なる場合、入学前に理解していても、実際に子どもの成長を見ていると保護者の方は不安になるものです。できていないことだけを見るのではなく、今どんな方法で、何を学んでいるかを共有することが大切だと思います。
私たちは、保護者を「第一の教育者」と考えています。PTAのような組織があるわけではありませんが、学校に関わっていただく機会は多いと思います。
、年に6回ほど開催する学習発表会「Celebration of Learning(COL)」には保護者の参加を推奨し、運動会を一緒につくったり、演劇づくりに関わったりすることもあります。フィールドトリップも、希望があれば保護者の方と一緒に行くことがあります。
COLでは、1年生から6年生までがPYPの6つのテーマに沿って学んだことを発信します。
同じテーマでも、学年が上がるにつれて問いの深さは変わります。例えば「私たちは誰なのか」というテーマも、1年生、2年生、3年生と、毎年違う深さで向き合います。
保護者には、発表を聞くだけではなく、一人の学習者として参加していただきます。子どもたちは英語で発表したあと、保護者に日本語でも説明します。同じ内容を二つの言語で伝えるなかで、ニュアンスによって伝わり方が変わることにも気づいていきます。だからこそ、英語だけでなく国語も大切だと考えています。
PYPの探究は、教室でどのように深まっていきますか?
PYPでは、教科の枠を超えた6つの学習テーマに沿って探究します。
例えば「私たちは誰なのか」「世界はどのような仕組みになっているのか」といった大きなテーマです。テーマそのものはIBの枠組みとして共通していますが、何をどのように探究するかは、子どもの年齢や地域性も踏まえて教員が設計します。
同じ「海」を題材にしても、1年生と6年生では問いの深さが違います。低学年での学びを重ねていくと、高学年では海洋学のようなテーマにまで進みます。小学校・中学校・高校で扱うような文献を読み終えると、大学の先生の資料を探し始める子どももいます。学校に電話をしてアポイントを取り、自分で話を聞くところまで動くこともあります。
探究は、ただ知識を集める時間ではありません。自分で問いを立て、情報を得て、自分の考えを言葉にして伝える学びです。環境問題を考える時も、将来の自分を重ねて考える時も、子どもたちが自分でテーマを深めていきます。
低学年からディベートの時間も設けており、意見を伝えたり、相手の話を聞いたりします。知識を持つことと、自分の考えとして説明することを切り離さない点に、IBの学びの特徴があると考えています。
日々の学校生活と、放課後の過ごし方を教えてください

初等部では、8時から8時30分が登校時間で、15時から15時20分に下校します。1年生から6年生まで同じ時間帯で、1時間目から6時間目まで学びます。
一般的な小学校のように各コマの間に短い休み時間を設ける形ではなく、2時間目と3時間目の間に軽食を取るスナックタイム、4時間目と5時間目の間にランチタイムを置いています。
京都校では、地域の団体と連携した放課後活動もあります。取材時点では、月曜日はチアリーディング、火曜日は音楽、水曜日はサッカー、木曜日は学習、金曜日はフェンシングといった活動があり、参加は子ども自身・ご家庭の希望によります。
年間の行事では、日本文化を考えるカルチャーウィークがあります。
お餅つきなどの伝統文化を学んだり、京都校ではお茶屋さんを訪ねて抹茶を体験したりしました。インターナショナルスクールでは海外の文化を学ぶ機会もありますが、同時に「日本の文化とは何だろう」と考えることも大切にしています。
フィールドトリップも多く、職場を訪問したり、スタートアップ企業で仕事や企業のあり方を学んだりします。
ほぼ毎月のように校外で学ぶ機会がありますし、プロの方を招き、子どもたち自身で演劇をつくることもあります。単に劇を発表するのではなく、より探究的に作品をつくっていく活動です。
編入や英語経験について、学校は何を見ていますか?
出願する子どもの多くはプリスクール出身です。ただし、英語経験や受け入れ方は校舎によって違います。
広島校では、取材時点で1年生を26人定員とし、2クラスに分けていました。一方は英語で学ぶクラス、もう一方は日本語しか話せない子どもも受け入れるクラスです。1年生の間に英語で学ぶ力を育て、2年生から合流する形を取っています。
なお、編入は、より慎重に見ています。
英語を話せるかだけではなく、新しい環境のなかで子どもが人と関わり、学び方に慣れていけるかが大切です。
まずは体験してもらいますが、半日ほどで日本語でも自分から話せるようになる子もいれば、日本語で話せる環境を用意しても、長い時間ほとんど関われない子もいます。
後者の場合は、入学した後に本人が大変な思いをする可能性があるため、学校として率直に保護者へ伝えます。
年齢が上がるほど、英語を基本言語として進む学びへの途中参加は難しくなりますから、3年生ごろ以降に他校から編入を希望しても、英語力が十分でないため受け入れが難しいケースもあります。
費用、給食、通学など、入学前に知っておくべきことは?
学費は校舎によって多少変わりますが、取材時点の目安として、年間で約200万円を見ていただければと思います。
月額の授業料は平均すると約13万円で、エリアによって前後2万円ほどの差があります。これに加えて、施設利用料が年に2回あります。

IBと受験、国内進学と海外進学は、どのように両立していくのでしょうか?
保護者の方からよく聞かれるのは、「IBを続けられるのか」「途中で別の進路を選ぶことになったら、日本の教育に適応できるのか?」ということです。
インターナショナルスクールを選ぶことと、国内の中学・高校受験を視野に入れることは、必ずしも切り離されていません。私たちの学校に入る家庭には、「国際教育も受けさせたいけれど、受験という選択肢も残したい」と考える方も少なくありません。
一方で、IBが大切にする学びは、日本の受験システムとは異なる学び方となります。保護者の方もその違いは理解されているのですが、子どもの進路を考えると不安が勝ることがあります。3年生、4年生になると、「このままIBで進めますか」と聞かれることも少なくありません。
高校段階のDPは、誰にでも同じように合うものではなく、自分の考えを繰り返し書き、表現する力が必要です。
IBの最終評価であるIBスコアは45点満点で、国内外の大学の出願に活用されますが、大学ごとに求めるスコアや評価方法は異なります。だからこそ、初等部の段階から、考えを言葉にし、書いて伝える力が大事になってきます。
AICJ学校群では、広島のIBDPコースで求められる探究力・思考力・表現力から逆算して、初等部のカリキュラムを考えています。ただし、すべての子どもを同じ進路へ導くことが目的ではありません。子どもが自分に合う学びを選び取れるよう、英語、探究、日本語、算数を重ねていきます。
どのような先生が、子どもたちの学びを支えていますか?
英語で行う授業を担当する教員は、IBを学んできた方、または海外でIBの授業を担当してきた方を中心に採用しています。日本国内で働いている方だけではなく、海外からも採用しています。
国語(Japanese)を担当する日本人教員は、国語の教員資格を持ち、英語でも子どもたちと関われる方を採用しています。
英語による探究と、日本語での学びを別々のものにせず、学校生活のなかで両方を支えられる体制をつくることを意識しています。
編集後記:迷いがあることを前提に、選択肢を残す学校
今回の取材では、AICJインターナショナルスクールが「英語で学ぶこと」だけを強調する学校ではないことが見えてきました。
学校生活の基本言語は英語であり、PYPの探究は、自らが問いを立て、考えを言語化する深い学びです。その一方で、家庭には英語を求めず、国語と算数を毎日学び、保護者が学び方を理解する機会をつくっています。
印象的だったのは、国際教育への期待と、子どもの将来への不安を対立させず、どちらも現実の問いとして受け止めていたことです。
IBを続けられるのか。日本の学校に進むことになっても大丈夫か。英語の環境に本人はなじめるのか。こうした問いに対し、学校は「誰でも大丈夫」とは言いません。
編入時の難しさも含め、本人にとって無理のない選択かを体験や対話で見極める姿勢が丁寧に語られました。