【取材】Kids Rocket Academy|「トライアル&エラー」で育てる、英語×日本語STEAMのバイリンガル・プリスクール

東京・日本橋人形町にあるKids Rocket Academy(KRA)は、午前は英語、午後は日本語でSTEAM教育を行うバイリンガル・プリスクールです。英語を身につけることだけを目的にするのではなく、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、さんすうなど多角的分野を体験し、「自分でやってみる」「失敗から次を考える」力を育てようとしています。

【取材】Kids Rocket Academy|「トライアル&エラー」で育てる、英語×日本語STEAMのバイリンガル・プリスクール

東京・日本橋人形町にあるKids Rocket Academy(KRA)は、午前は英語、午後は日本語でSTEAM教育を行うバイリンガル・プリスクールです。

英語を身につけることだけを目的にするのではなく、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、さんすうなど多角的分野を体験し、「自分でやってみる」「失敗から次を考える」力を育てようとしています。

代表の白井裕子さんが繰り返し語ったのは、「トライアル&エラー」という言葉。

子どもが間違えることを恐れず、自分の好きなことや疑問を起点に、試し、考え、また挑戦する。その環境を、英語と日本語の両方でどうつくるのか。創設の背景から、日々の体験、保護者との関わり、卒園後の選択まで伺いました。

この記事で分かること

  • Kids Rocket Academyがデザイン思考と試行錯誤を大切にする理由

  • 英語と日本語を、幼児期の学びの中でどう位置づけているか

  • 月ごとのテーマを起点にしたSTEAMの実践例

  • 少人数の保育、保護者との連携、入園までの流れ

  • 卒園後の多様な小学校選択と、家庭へのメッセージ


学校として、最も大切にしている教育理念を教えてください。

白井さん: 当園は、午前は英語、午後は日本語でSTEAM教育を行うバイリンガルスクールです。開園当初から、幼児期にSTEAMを取り入れたいと考えてきました。

私たちが大切にしているのは、スタンフォード大学のd.schoolの手法にも通じる「デザイン思考」です。ただ、幼児に難しいことを詰め込むのではありません。いろいろな視点から物事を捉えること。そして、どんどん挑戦し、失敗した時に次をどうするのかを考えることです。

「トライアル&エラーが当園のモットーなので、どんどんチャレンジしていって、どんどん失敗していって、そこからどうするかを考えようっという思考を育てる園です。」

カリキュラムはありますが、先生たちも「こういうことをやってみようか」と新しいものを生み出していきます。決まった答えに向かうだけではなく、子どもたちと一緒に体験しながら学んでいく園だと思っています。

白井さんご自身は、どのような経験から、こうした学校づくりに至ったのでしょうか。

白井さん: もともとはアパレルのデザインという、教育とは異なる分野にいました。子どもを育てるなかで、私立幼稚園の受験を考えた時期もありましたし、子どもがインターナショナルスクールに通う経験もしました。

下の子をアメリカで出産したこともあり、海外の教育にも触れました。上の子は、以前は間違えることへの抵抗が強く、正しい答えを出して褒められることを大事にするような、少しシャイな子でした。でも、自由に発想してよいという空気のある幼稚園に入ったことで、様子が大きく変わったんです。

一方で、日本の教育が悪いとは今も思っていません。基礎的な力を学び、集団のなかで物事に取り組む力を育てる点には良さがあります。

ただ、型にはめすぎると、後から発想力を働かせにくくなることもある。基本的なルールやしつけがあるなかで、どう自由に考え、取り組むか。その両方を大事にしたいと思いました。

デザイン思考は、子どもたちの活動にどのように表れていますか?

STEAM教育やデザイン思考は、実際にはどのような活動になっているのでしょうか。

白井さん: STEAMは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、さんすうの頭文字を取ったものです。もともとはSTEMでしたが、これから先の時代を考えると、アートやデザイン、新しいものを生み出す発想力も大切だと考えています。

私が幼い頃は、近所にそれぞれ専門性を持つ大人がたくさんいました。大工さんに木のことを聞いたり、農家の方に野菜のことを教えてもらったり、星のことなら理科の先生に聞いたり。そういうさまざまな大人との関わりを、スクールの中にもつくりたいと思ったことが出発点です。

毎月、必ず一つのテーマがあります。たとえば「水」がテーマなら、水について実験し、水を使ったアートを行い、さんすうにもつなげていく。ひとつの事柄を、いろいろな方向から考え体験していきます。

年少の頃は、まず「なぜだろう」「何だろう」という概念に触れます。年中になると検証と実験を重ね、年長では、それまで学んだことを踏まえて「もっとよくするにはどうしたらいいか」「もっとかっこよくデザインするにはどうしたらいいか」と考えるワークショップに取り組みます。

実社会とつながる体験もあると伺いました。

白井さん: はい。学習して体験して終わりではなく、子どもたちが学んだことが実際の社会でどう使われているのかまで見せたいと思っています。

過去には、光をテーマに学んだ子どもたちが、企業でのワークショップを通して、光がどのように使われているかを見たり、ドローンやロボット、プログラミングについて体験したりしたことがあります。バイオテクノロジーをテーマに、発酵や微生物について専門家から学んだこともあります。

「色」がテーマの時には、三原色を学ぶだけではなく、昔は絵の具がなかったという話から始めて、身近な材料で絵の具をつくりました。その後、絵の具の原料に触れ、実際にクレヨンづくりを体験したこともあります。

ただ楽しかった、で終わらせないことが大切です。

学んだことがあって、そのうえで体験する。そうすると、子どもたちも「自分たちが学んだことは、こういうことだったんだ」と分かっていきます。


子どもたち自身の関心が、活動を広げていくこともあるのでしょうか。

白井さん: あります。自然科学の活動をきっかけに、旅行先で苔を拾ってきたり、学んだことを保護者の方と一緒にさらに調べ、スクールで発表したりする子もいます。人体をテーマにした時には、鳥の骨を集めて「一羽の形ができるか」を見せてくれた子もいました。

子どもたちが教材を持ってきてくれることがあるんです。自分が面白いと思ったことを持ち寄り、みんなに見せたい、話したいという気持ちが、次の学びにつながっていきます。

英語と日本語を、どのように位置づけていますか?

白井さん: 私は、グローバルに活躍するということは、母国語を捨てないことでもあると思っています。英語が話せる子は世界中にいます。そのなかで、自分がどこの、どんな人間なのかを伝え、人とつながるためには、母国語や自国の文化も大切です。

「グローバルに活躍するっていう意味は、母国語を捨てないっていうことっていうのにたどり着いたのが、私の教育法です。」

英語も日本語も、子どもたちが何かを発展させていくための道具の一つだと考えています。だから午前は英語、午後は日本語でSTEAM教育を行っています。

英語に初めて触れるお子さまでも、入園はできますか。

白井さん: もちろんです。英語でサイエンスをしたり、テクノロジーやアートに取り組んだりするなかで、自然に知識と言葉を身につけていきます。フラッシュカードで単語だけを覚えるような方法ではなく、日々の生活や学習のなかで英語に触れていく形です。

日本語の時間は、どのように進めていますか。

白井さん: 日本語も英語と同じように、曜日ごとにさまざまな先生が入り、いわばお稽古のような形で学んでいきます。英語だけ、日本語だけに偏るのではなく、両方を子どもたちの学びの道具として使えるようにしていきたいですね。

在籍する子どもたちには、どのような背景がありますか。

白井さん: 日本人が中心ですが、日本橋という場所柄、海外転勤を予定しているご家庭や、海外から帰ってきたご家庭もあります。午後の日本語を学びに来る、インターナショナルスクールに通うお子さまもいます。日本人が中心ではありますが、さまざまな国や背景を持つ子どもたちがいます。

日々の保育と、保護者との関わりについて教えてください。

白井さん: 当園は認可外保育施設でもありますので、安全面や施設面、アレルギー、離乳食、午睡、トイレトレーニングなどへの対応は、保育園と同じように行っています。

教育の内容だけではなく、子どもが毎日安心して過ごせることが前提です。そのうえで、子どもたちの月齢や発達に合わせた体験を用意しています。

保護者との連携で、Kids Rocket Academyらしい点はありますか。

白井さん: 全ての部屋にウェブカメラを設置していて、保護者の方は授業をリアルタイムで見られます。私たちは「毎日が参観日」のような園だと考えています。

ただし、子どもを監視するための仕組みではありません。子どもが今日どんなことをしたのかを家庭でも一緒に話したり、「そういえば、こんなことをやったね」と思い出したりするために使ってほしいと思っています。

「あったかい目で見守ってもらって、成長を一緒に見守るスタイルでいる方じゃないとうちには合わないです。」

スクールでの学びを、家庭での会話や次の興味につなげてほしい。保護者の方にも、子どもの学びを一緒に楽しんでいただけたらと思っています。


入園までの流れと、入園前に確認してほしいことを教えてください。

白井さん: まず、スクールの考え方や内容を説明します。その内容に納得していただいたうえで、体験を申し込んでいただく流れです。

当園では、無料で5日間、月曜日から金曜日まで体験できます。子どもにとって、環境や場所、先生に慣れるには、一日では足りないと思っています。保護者の方にもスクールを見ていただき、私たちもお子さまの様子を見る。お互いに合うかどうかを確かめるための期間です。

どのような家庭に、特に合うとお考えですか。

白井さん: ただ保育をしてほしい、というより、子どもが学び、いろいろな体験を重ねる環境に置きたいと考えるご家庭に合うと思います。

子どもが初めての場所を嫌がることは当然あります。でも、保護者の方が「ここで育ってほしい」「この環境で学んでほしい」と考えて選ぶなら、子どもは驚くほど早く順応します。保護者の方にも、あたたかく見守る覚悟は必要だと思います。

少人数で、クラスは最大でも6〜8人ほどです。一人ひとりの興味や様子を見ながら、いろいろなアプローチやサポートをしています。ただ、どんな教育環境であっても、最後に学びを自分のものにするのは子ども自身です。

卒園後は、どのような進路を選ぶ家庭が多いですか?

白井さん: 本当にさまざまです。近隣の公立小学校に進み、中学受験を考えるご家庭もあります。私立小学校を選ぶご家庭もありますし、英語の環境を続けたいと考えて、インターナショナルスクールを選ぶご家庭もいます。年によって傾向は変わります。

英語だけでも、日本語だけでもないので、子どもたちには選択肢があります。ここでの体験を通じて、発想したり、人前で発表したり、サイエンスに興味を持ったりするなかで、「次もこうした環境を続けたい」と考えるご家庭もあります。

私は、子どもにとって大切なのは学校名そのものよりも、どんな環境に身を置くかだと思っています。学校にいるだけで何かが身につくわけではありません。その環境のなかで、子ども自身がどう取り組むかが大切です。


保護者の方へ、最後に伝えたいことはありますか?

白井さん: いまは選択肢が本当に多い時代です。だからこそ、あっちもこっちもと目移りするのではなく、「ここで、これを学ばせたい」と決めたら、ある程度は継続して見ていただきたいと思います。

英語力も、思考力も、1週間や2週間ですぐ身につくものではありません。子どもの成長には時間がかかります。いろいろな教育法があっても、実際に学ぶのは子どもです。子どもが楽しいと思い、落ち着いて学べる環境をつくることが大切だと思います。

子どもの「好き」は、何から始まってもいいんです。マインクラフトが好きなら、そこから鉱物に詳しくなったり、サイエンスや電気に関心が広がったりすることもあります。恐竜でも、電車でも、何でもいい。好きなものを見つけ、そこから世界を広げていける子は強いと思います。

親御さんも間違っていいと思います。選択肢はいくらでもあります。ただ、あれもこれもとやりっぱなしにするのではなく、子どもが何に心を動かされているのかを見ながら、その興味を少し先へ広げられるように支えてあげてほしいですね。

編集後記|子どもの「好き」を、次の問いへつなげる

白井さんのお話から伝わってきたのは、STEAMを早期から高度に教え込むためのプログラムではなく、子どもが「なぜだろう」「やってみたい」と思う瞬間を、次の体験や問いにつなげていく場としてのKids Rocket Academyの姿でした。

英語と日本語のどちらかを選ばせるのではなく、母国語を大切にしながら、二つの言語を学びの道具として持つ。日本の教育が培ってきた基礎を尊重しながら、失敗を恐れずに試す経験も積み重ねる。その二つを切り離さずに考える点に、同園らしさがあるように感じます。

幼児教育に唯一の正解はありません。

けれど、子どもが安心して通い、自分の関心を言葉にし、試し、失敗し、また挑戦できる環境があることは、その後の学びにもつながっていくはずです。まずは見学や体験を通じて、子どもが過ごす日常と、家庭が大切にしたい教育の考え方が重なるかを確かめてみるとよいでしょう。