【保護者インタビュー】南アルプス子どもの村小学校・中学校|「この子に合う場所はどこだろう」。自己決定の学びと寮生活を選んだ家庭の話
南アルプス子どもの村小学校・中学校は、「自己決定」「個性尊重」「体験学習」を三つの原則として掲げており、授業の大半は、子ども自身が入りたいクラスを選ぶ「プロジェクト」と呼ばれる縦割りの学びを大事にしているとのこと。インタビューでは、同校に子どもを通わせる保護者さんに、学校を選んだ経緯、本人の意思をどう受け止めたか、寮生活への不安、日々の学びや放課後の様子、そして学力・進路との向き合い方を聞きました。
「子どもによって、学びのペースは全然違う」
家族の経験を通してそう感じたことから、今回の保護者さんは、一般的な進学以外の選択肢も含めて、子どもの学ぶ場を探し始めました。
南アルプス子どもの村小学校・中学校は、「自己決定」「個性尊重」「体験学習」を三つの原則として掲げており、授業の大半は、子ども自身が入りたいクラスを選ぶ「プロジェクト」と呼ばれる縦割りの学びを大事にしているとのこと。
インタビューでは、同校に子どもを通わせる保護者さんに、学校を選んだ経緯、本人の意思をどう受け止めたか、寮生活への不安、日々の学びや放課後の様子、そして学力・進路との向き合い方を聞きました。
「この子に合う場所はどこだろう」と考え始めた
一般的な進学以外の選択肢を、なぜ探し始めたのでしょうか?
私たち家族のこれまでの経験を通して、子どもによって学びのペースは全然違うのだと感じていました。それが、こうした学校を調べ始めたきっかけの一つです。
最初から「こういう教育理論の学校に行かせよう」と決めていたわけではありませんでしたが、いろいろな学校の形があると知るうちに、オルタナティブ教育にたどり着きました。
自分たちの子どもには、決められたことを一方的に押し付けられることに、強い拒否感があるように見えました。子どもの主体性や創造性を大切にする保育園だったので、そこでは何も問題なく過ごせた子が、小学校では「困った子」と見られてしまうかもしれない。子どもの特性を、個性や困りごとだけで捉えない環境を探したいと思いました。

ご自身の子ども時代の経験も、学校を選ぶ時に影響しましたか?
影響していると思います。
私は公立小でしたが、フィールドワークの授業を経験したことがあり、自分が発見したことを発表したり、先生に報告したり、その毎日がすごく楽しかった記憶があります。
でも、学年が変わって担任が変わった時、「先生!こんなことを見つけたよ」と話したら、「教科書に載っていないことは勉強する必要がない」と言われてしまったことがありました。
そこで、学びたいという気持ちがしぼんでしまった感覚がありました。
自分が「面白い」「知りたい」と思ったことを大切にしてもらえる環境って、子どもにとってすごく大事なんだと思います。自分で考えて、やってみて、それを認めてもらえる経験が、その子自身の自信にもつながっていくのだと思います。
だからこそ、「誰かと比べてできるから自信がある」と思うのではなく、自分が自分であることに価値を感じられたらいいな、という思いがあります。
最後は、子ども自身が「行ってみたい」と思えるか
南アルプス子どもの村を選ぶ際、お子さま自身の気持ちはどのように扱いましたか?
実は、近くの公立小学校も見学しましたし、南アルプス子どもの村の2泊3日の体験入学を経て、本人はどちらについても「楽しそう」と言っていましたが、最終的には「こっちに行ってみようかな」と本人が決めました。親が学校を選ぶだけではなく、子ども自身がこの学校に行きたいかを大切にしている学校です。
離れた場所の学校を選ぶことに、ご家族の迷いはありましたか?
ありました。
仕事もそうですが、今いる地域には家族にとってのつながりや支え合いがあり、子ども自身も、引っ越すことには躊躇がありました。ですから、その地域に暮らし続けながら別の教育を選ぶなら、寮のある学校か、近くの学校か、という選択肢になると考えました。
家族も最初から賛成だったわけではありません。
「わざわざ遠くの学校に入れる必要があるのか」と慎重でしたが、もし子どもがつらくなったら、その時に改めて、その子にとってどうするのがいいのか考えればいいと思っていました。本人が楽しそうに通っている姿を見るなかで、少しずつ受け止め方が変わっていったように思います。
寮生活への心配
平日を寮で過ごすことに、不安はありませんでしたか?
入学前に学校からは、ホームシックになって当然、と言われていましたが、実際「寂しい、帰りたい」と言われたらどうしようと心配でした。
最初は寂しい気持ちがあったようですが、今では寮で友達と過ごすことを楽しんでいるようです。本人が学校生活を楽しんでいるのは何よりうれしいです。
親元を離れることについて、周りからはどのような反応がありましたか?
「小さいうちから親元を離すのはかわいそう」「子育ての時間は短いのに」という意見は、やはりあると思います。親族に相談すれば反対されるかもしれないと思い、わが家では夫婦だけで考え、入学決定後に親族に伝えました。
今は、一緒にいる時間の長さよりも、帰ってきた時に一緒にいる時間や、関わる時間の密度を大事にしようと思っています。
寮でも、学校でも。甘えられる大人や上級生がいると感じた
寮生活を任せられると思えたのは、どのような場面でしたか?
この学校には、緊張した雰囲気があまりないと感じています。
子どもが自由に先生に話しかけたり、職員室にたくさんの子どもたちが出入りして、先生の膝に乗っている様子を見聞きして、大人に甘えられる環境があるのだなと思いました。
上級生も寮での寂しさを経験しているので、年下の子が寂しそうな時には、慰めてくれたり、一緒に遊んでくれたりするようです。そういう人たちがいると聞いて、寮生活も大丈夫かもしれないと思えたところがあります。
子どもが上級生や中学生の話を日常的にすることは印象的です。
小学生と中学生が常に同じ活動をするわけではないものの、食事をする場所や行事などで接点があるので、年齢の違う子どもたちの姿が、特別な機会だけではなく、学校生活のなかにあることも、親として安心材料の一つになっています。
何より、今は学校を嫌がる様子がほとんどないことがうれしいです。
月曜日には、ぱっと起きて出発の準備をする。その様子から、本人なりに学校生活を受け入れているのだと思います。
学校での様子は、どのように知るのでしょうか?
学校での出来事を写真付きで伝える週ごとのお便りがあり、学期ごとの生活の記録には、ひとりひとりの学校での様子が書かれて届きます。
事前に申請すれば好きなタイミングで学校見学ができたり、心配なことがあれば先生との面談をお願いできます。
子どもから連絡が来る頻度も、お子さんによってそれぞれ違うようです。
(寮生活の場合、寮にある公衆電話から子どもが自宅へ電話することが可能)
子どもが自分の学校生活をつくっている時間でもあるのだと思っているので、気になることがあれば学校へ相談しながら、子どもの学校生活を見守っています。
「何をやりたいか」を選ぶ、プロジェクトやチョイスの時間
「プロジェクト」とは、異なる年齢の子どもたちが一緒に活動する縦割りのクラスで、活動テーマによって、子ども自身が入りたいクラスを選びます。
たとえば何かをつくる、育てる、表現する、暮らしについて考えるといった活動に、子どもたちが自発的に協力して取り組む。その過程で、必要になったことを調べたり、関連する教科に触れたりするという活動です。

また、プロジェクトに加えて、体育や音楽、図工などにあたる「チョイス」の時間があり、そこでは自分自身がやりたい活動を選びます。
これは大学の授業を選ぶようなイメージだと思いますが、様々な活動のなかから、自分がやりたいものを選ぶ。例えば、制作、工作、クッキング、ダンス、サッカーなど、グループで行う活動もあります。
「出場するかどうか」から自分で決める運動会
自己決定を大切にする環境は、お子さまにどのように表れていると感じますか?
自分が「挑戦する」と決めたことに対しては、文句を言わずに頑張っているようです。
学校以外の地域の行事に参加したことがあったのですが、自分で「やってみたい」と決めたことには、最後まで諦めずに取り組んでいました。
自分で決めたことだから、という感覚があるのかもしれません。
運動会も印象に残っています。
運動会は、プログラムから子どもたちが考え、”出るかどうか”も自分で決めるそうです。

競技に参加しない子もいる一方で、「出たい」と思って参加するからこそ、本気で走る子どもたちの姿はとても清々しく、楽しそうです。
普段は、子ども同士を比べたり、競争させたりすることはありません。でも、だからといって子どもたちが競争を嫌がるわけではなく、運動会で順位がつけば、やっぱり燃える。自分で「やりたい」と思ったことだからこそ、競争も含めて、一生懸命に取り組めるんだと思います。
親としては、「せっかく見に行くのだから出てほしい」と思うこともありますが、でも、それは大人を喜ばせるための参加になっていないか。運動会を通して、親自身も考えさせられました。
それから、前年は参加しなかった子が翌年には参加した、といった変化を、保護者同士で自然に受け止める雰囲気もあります。子どもたちの行動をすぐに評価するのではなく、その時の本人の選択を見る。
運動会のような行事では、子どもだけでなく、親にとっても自分たちのあり方を見つめ直す機会になっているかもしれません。
また、学校にいる間はゲームなどの電子機器の持ち込みは禁止されています。
ただし、それは親や学校が一方的に決めたルールというより、以前に持ち込みが可能だった時期には、貸し借りなどのトラブルがあったと聞き、子どもたちで話し合って今の形になったようです。
これは、学校が大事にしている「自己決定」が、「何でも自由にできる」という意味ではなく、過去に起きた困りごとをきっかけに、自分たちの生活に必要なルールを、自分たちでも考える。その過程にも、学校が大切にする話し合いの姿勢が表れているように感じます。
子どもが考え、試し、失敗することも見守る
学校では、週1回の全校ミーティングのほか、クラスや寮でもミーティングを行い、活動や行事の計画、困りごとなどについて話し合います。
何かを決める時も、困ったことがある時も、子どもたちはミーティングをします。子ども同士でトラブルになった時も、話し合いの場に上がり、子どもたちで解決できることは、子どもたちで考えていくようにしているようです。
そして、こうした話し合いでは、子どもも大人も一人一票。年齢や立場に関係なく、一人の人として同じ一票を持っているというところも、この学校ならではだと思います。
もちろん、大きな問題になった時にどう対応するかについては、先生や親が関わることもあるのだと思います。でも、先生たちもすぐに答えを教えるのではなく、「なぜうまくいかなかったのか」「次はどうしたらいいのか」を子どもたち自身で考えることを大事にしているように感じます。
うまくいかなかったことや失敗も、子どもたちにとっては大切な学びの機会。大人が先回りして解決するのではなく、子どもたちが自分で考え、試して、時には失敗しながら成長していくことを、基本的には見守っているのだと思います。
テストや宿題がないからこその、親の迷い
テストや宿題がない環境について、入学前にはどのように感じていましたか?
勉強はしますが、一般的な学校のように、ドリルを何度も繰り返したり、宿題を出したりする形ではありません。
学期末に、学習したプリントを持ち帰りますが、宿題もテストもないので、子どもがどれだけできているかが分かりにくいです。たとえば、文字の書き順が違っていたりすると、気になることはあります。それを一つ一つ心配し続けてしまうと、この学校では苦しくなるかもしれないとも感じています。
中学校以降の進路については、どう考えていますか。
子どもにとっては、安心して自分らしく過ごせる場所なので、中学を卒業した後に、次の環境にうまく適応できるかなという若干の不安はあります。学校からは、子どもの成長や学びを急かしすぎないで見守ってほしいという趣旨の話が丁寧にありました。
ですから、学校選びや将来について、本人が決めることを大事にしていきたいと考えています。
親同士で話せること、学校へ相談できること
保護者同士のつながりはありますか?
任意で集まる機会があります。話題になるのは、子どもが寮生活に馴染めるか、学校に行きたがらない時をどうしているか、進路をどう考えるか、といったことが多いです。
寮に入ったばかりの子がホームシックになってしまった時にも、年上の子を持つ保護者から経験を聞けますし、親として不安を一人で抱え込まずに話せる場があることは、支えの一つになっています。
他に多い話題として、「なぜこの学校を選んだのか」という話もよく出ます。
そこに集まるそれぞれのご家庭の考え方や、子どもの様子はもちろんそれぞれで、それでも、寮生活や進路について先に経験した保護者さんの話を聞けることは、これからのことを考える際の一つの参考になっています。
また、学校行事のあとに、学校で先生と保護者が一緒に飲み会をすることもあるんです。先生と保護者という立場はありますが、そこにあまり垣根がなく、普段から気軽に話せる。そういう関係ができているから、学校に相談したいことがあった時にも、すごく相談しやすい環境になっていると思います。
入学を慎重に考えたほうがよいケースはあるでしょうか?
「大人が決めたルールに沿って動くほうが安心する子」には、少し大変な場面があるかもしれません。自分で考えて決めることが多いので、最初は戸惑うこともあると思います。
また、親が「学年ごとの平均的な学力」に強くこだわる場合も、テストや宿題のない学び方に不安を抱くかもしれません。
寮生活では、体調不良などがあった時に、平日でも家庭の対応(ケガや病気など)が必要になることがあります。こうした生活上の臨機応変な対応ができるかも事前に考えておくと良いと思います。
「一度選んだら、ずっとここにいなければならない」と考えすぎない
一般的ではない進学を迷っている保護者に、伝えたいことはありますか?
「ここに入ったら、ずっとここにいなければならない」と考えすぎず、いつでもその時の子どもの様子を見ながら、また考えればいい。そんなおおらかな気持ちでいたらいいのかなと思います。
やってみないと分からないことは絶対にありますし、学校が子どもに合っているかどうかも、すぐには分からないことがあると思います。長い目で子どもの様子を見ながら、その時々で考えていけばいいのではないでしょうか。
最初から「この選択が正解だった」と思いすぎたり、「一度決めたのだから、ずっとここにいなければ」と考えたりすると、親子ともに苦しくなってしまうのではないでしょうか。
今は楽しそうに学校へ通っています。ただ、これからどうなるかは分かりません。それでも、今の姿を見ていると、この学校を選んでよかったと思っています。
編集部注
・本記事の内容は、匿名の保護者さんへのインタビューに基づく個人の経験・受け止めです。学校全体の状況や、すべての子ども・家庭に当てはまる内容を示すものではありません。
・プロジェクトの内容、寮・通学、募集、費用、編入可否などは年度や個別の状況で変わる可能性があります。検討の際は、必ず学校の最新案内や見学・相談の機会を通じて確認してください。
・学校の公式情報: 南アルプス子どもの村小学校・中学校 / 授業について / 寮と通学方法